オレの好きなさんは、とっても柔らかく笑うんだ。肌だって夏なのに透き通るような白さをもっていて、 征服から伸びる手足はバランスのよい形をしていて細い。オレはもっとその子に近付きたいと思うんだけれど 、なかなかダメなんだ。ちょっと勇気を出してみようとしたって、それが皆無になってしまうんだ。 夏の暑い日差しが照りつける校庭を教室の窓から見下ろす。 暑いけど、窓を開ければ風が入ってくるため幾分か気持ちがいい。


「沢田くん。」


ふと聞き覚えのある声が耳に響いた。高過ぎず低過ぎず、少し遠慮がちな声。 その声に振り向くと想いを寄せている彼女が、ふわりと微笑みを浮かべながら目の前にいた。 オレは慌てて彼女の方に体の向きを変え、返事をする。


「ん?なに?」
「えっとね!手が空いてたらで良いんだけど、プリントを準備室まで運ぶの手伝って貰ってもいいかな?」
「うん、いいよ。手伝う。」
「ありがとう。」


あ、やばい。いまさんが言ったありがとうの時の笑顔にすごくキュンとした。 どうして彼女の笑みはこんなに優しい気持ちにしてくれるんだろう。


「なんかごめんね。折角の休み時間なのにプリント運ぶの手伝わせちゃって。」
「ううん、大丈夫だよ。どうせぼーっとしてただけだし。」
「ふふ、ありがとう。沢田くんは本当に優しい。」
「そうかな?」
「うん、優しい。」


そこまで言われると恥ずかしくなるけど、全然悪い気はしない。当たり前だけどね。 さんの手にもオレの手にもプリントが半分づつ乗っている。あれ、でも他にも手が空いてそうな奴はいたよな? 女子だって居たのに。なんでだろう。


「ねぇ。」
「なあに?」
「なんで…その、オレに手伝い頼んだの?」


オレがそう尋ねると、さんは一瞬戸惑ったように視線を泳がせた。 その後、恥ずかしそうに真直ぐ歩く先を見つめながらこういった。


「それ、は、沢田くんに手伝って欲しかったからだよ。」
「…え。」
「私は、もっと沢田くんに近付きたかったの。」


さんはスッとこちらをみて恥ずかしそうにはにかんだ。







君と歩くその先



(期待しても、いいかな。)






2009.08/16 seaone