、おきなよ。」


私の直ぐ横にいる彼が私の耳元でそう、告げた。私は少し体を動かして返事を返した。
そんな私をみて彼は少し微笑む。その、目の細め方が好きでずっと見てたくなるのだ。


「まだ起きないの?」
「・・・うん。」
「でも、もう夜が直ぐそこに迫ってきてるよ。」


独特な言い方。いつもそう。彼は物事を普通に表現しない。そこらじゅうに転がっている
言葉をひとつ、ひとつ選んでちょっと違う形で表現していく。深みがあるような物語のような。
そんな、彼の言葉の表現が好きでずっと耳を傾けていたくなる。


「それは、怖いね。」
「そうだね、だったら早く暖かい光の満ちる場所へ移動しよう。」
「うーん。」
「嫌なのかい?」
「もう少し、もう、少しでいいから此処にいたいな。」
「飲み込まれてしまうかもしれなくとも?」
「そうね、もし飲み込まれてしまったとしても温度で互いを確認しあえるから大丈夫だよ。」
「そんなもの、かな。」
「多分ね。」
は、ボクが嫌じゃないんだね。」
「今更?私には白蘭しかいないのに。」


たまに、彼はわざとらしい質問をしてくる。そう答えるしかないような事を。でも、それは
確認したいだけかな。私が白蘭を思っているのかって言う事を。
人も怖いけど、私は言葉が怖い。その一つでいろいろなものが左右されていくから。
だから、あまり喋らないんだけど。白蘭となら会話が出来るの。言葉は良いも悪いも
あって、本当に気をぬいて発した言葉はいつか後悔に繋がるものだと思う。
だから、言葉を選んで喋る貴方が好きなんだと思う。ねぇ、白蘭。


言葉は、大切だよ。


「ねぇ、」
「ん?どうしたの、。」
「葡萄色が空を侵食していくね。」
「だから移動しようってさっきから言ってるじゃないか。」
「そっか。そうだね、帰ろうか。」
「うん、でもボクは葡萄色の空は嫌いじゃないよ。」
「私も。暗すぎなくて明るすぎなくて好き。」
「いちばん落ち着く色の空かもしれないね。」
「うん。」






葡萄色が侵食する







葡萄色は「えびいろ」と読みます。とても濃い色です。本当にぶどうの巨峰みたいな色をしているんです。タイトルの色がそうです。
初、白蘭。まったく違う人みたい。キャラがつかみにくいなぁ。一人称ボクでいいのか?と、とりあえずリハビリ・・・。
20071113 鵠沼杵多