たとえば、の横顔や輪郭がすらりとして綺麗だったら、多分俺は触れたくて仕方がないだろう。
もし、の髪が究極にぼさぼさだったら、きっと俺はくしで髪を梳かしたくて仕方がないだろう。


もはや、俺は、のすべてに触れたくて仕方がないんだと思う。


のその仕草はどこから来るんだろうとかのその美的思考はどこから生まれてくるのかとかどうすればそんなものが育まれるのかとか考えても仕方がない。 でもどうしても知りたくなる。まぁこれは人間の欲だよな。俺にとって今目の前にいるは驚くほどに興味の湧くものでしかないのである、笑えるもんだろ。 まさに、実験用のモルモットみたいなもんさ。こんな言い方は失礼極まりないけど。俺は、限りなく完璧なものを目指したくてしかたがないのさ。完璧、カンペキ、かんぺき。 人々は口々に言うがこの世に完璧なものなんて何ひとつないのさ。完璧だったとしてもそれは日々変わっていくわけだし必ず、何時か、何処かで支障が出るもんなんだよ。 永遠に美しさを保ち一寸の狂いもなくいつ付けられるものなんてないのさ。あったら僕は今頃感動しすぎて驚嘆しながら泣き続けていることだろうね。怖すぎるものだ。 人間にだって同じ事は言えるさ。人間だって日々育ち細胞が生まれ死んでいく、若くなり衰えていく。輝き萎びていく。花にだって言える。芽をだし伸び、花を咲かせ一瞬のうちに かれる。儚いモンだよね。なにか願いが叶うならなにか違うものに生まれ変わりたいよ。でも、俺は俺でしかなくて柿本千種はカキモトチクサでしかなくてかきもとちくさなのさ。 で一人しかいないんだよ。似ている人がいようといまいと変わりはないんだよ。俺は最近大分おかしくなった。なぜか実験台のようだったに想いを持ってしまった。 実験のつもりで接しているつもりなのに優しくしてしまったり、気がつくと抱きしめていたり、顔が近づいていたり。あわてて俺はをつきはなす。どたんと音がして 床に転がる。はすぐに体を起こしてまたもとの位置につく。そして、なぜかそれをすぐに謝ってしまう。


「ごめん、痛いとこある?」
「大丈夫です、千種様」
「こんな事されてるのに何で笑えるの。」
「さぁ、なんででしょう・・・。」
「分からないの?」
「はい、単細胞の私には考えがつきません。」
「・・・・そう。」
「千種様は分かるのですか?」
「分かるけど、説明はめんどい。」
「・・・ならば、聞きません。」
「いい子だね、は。」


なんで、が俺のそばにずっといられるのかは、俺が半ば無理やり同棲させているから。には元々親がいなかったために里親に育てられ何をしてもそこまで 怒られなかったらしい。元はよい子だからね。だから、に嘘をつかせて同棲させそばに居させその行動一つ一つを眺めている。くだらないことだけど、俺には 十分意味があることなのだよ。でも、自分でに恋心を持ってしまったことに気がついたときはもう駄目だと思った。実験と称して無理やり同棲をさせている自分に 嫌気が差した。悲しい人間になったものだと思ったよ。馬鹿だと思ったよ。ただのわがままで、独り占めしたかったんだ。がおかしくなってしまったのもおれのせいだ。 もとは、普通のそこらへんの女と変わらない女の子だったのに。今じゃなんだこれ。ご主人様に仕える使用人みたいなね。ごめんね、俺、今更だけどに謝るよ。


「ごめんね、。」
「どうしたんですか、いきなり。」
「もう、いいんだよ。敬語なんて使わなくていいんだ。」
「は?」
、さっきの理由教えてあげるよ。」
「本当ですか?」
「あぁ、コレはね、つまり。」
「は・・。」
「だからね、恋心なんだって。」


それを聞いた瞬間にの顔は涙でぐしゃぐしゃになって床に崩れ落ちた。そして、笑って「好き、好き、好き。」とただつぶやくだけだった。あーいつからだ。 久しぶりに見た、普通の女に戻ったを。そうだ、恋におぼれてこその女の子なのだよ。愛しい愛しい。俺の心臓となる核。俺をささえる軸よ。 実験台だなんて本当に失礼極まりない。今すぐ首をつれる自信もあるよ。切腹だってなんだって出来るほど自分への嫌悪感と罪悪感と羞恥心で溢れかえってるよ。


喜怒哀楽を取り戻したは普通の女のように料理もしたり歌ったりもした。俺はそれを美しいと思ったよ。でもこれほど恐ろしいものはない。


つたなくてとりえのないこと。上手で下手なこと。その普通さがには美しい。
でも、それは、多分、良い物ではなかった。少なくとも、俺にとっては。











巧拙凡庸

(発作が止まらないよ)










自分でも意味が分からない。つまらないね。タイトルは「こうせつぼんよう」とよみます。
倖 燗拿20070529