あーあのブロンドのくるくるしたセミロングの髪の女。見たことがある。どこだったかなぁ。深い緑色の目が特 徴的で適度に焼けた肌が綺麗で細身で・・・。あー、まじどっかで見たことあんだよな。丸いでかいわっかが付 いたピアス・・・。ピアス?あぁ!思い出したぞ!オレが任務の時に偶然助けた女だ!! いや、でも驚いた。まぁわりと人気のあるこのなんの変哲もない普通のスパゲティー屋で働いているなんて。こ の女、なんであの時あんなところにいてオレと同じ敵を狙っていたのだろうか。でも今はそんな事よりも腹の虫 がうるさい。一刻も早く腹ごしらえをしなくては倒れてしまうだろう。オレが今居るこのスパゲティー屋は、セ ントラルの駅から少し歩いた所にあるこぎれいな建物で口コミで人気になり、お昼時には長蛇の列が出来るほど の反響ぶり。ここの料理長は、昔有名なホテルに勤務していた三ツ星の腕をもつすごい人らしい。店内は緑の壁 にたくさんのだ円形テーブルとすわり心地のよい木製の椅子が4つづつ置いてあり仕切りがあまりない開放的な 感じだ。店員が奥から出てきて一名様ですか?とか、お煙草は吸いますか?とか、ごく普通の飲食店と同じ様な 質問をし、オレははい。と吸いません。とだけ簡潔に答えその店員とは会話を終えた。好きな席に座れと言われ たので会計のカウンターに近い席に腰を下ろした。それにしても人が、多い。タバコの匂いやスパゲティーなど のいろんな匂いが交錯していて、あんまりいい感じはしなかった。それでも、店内は壁の色 とラジオから聞こえる陽気な歌と明るい照明で雰囲気はいい感じに保たれていた。 オレが、その女の存在に気が付いたのは注文を頼んだ時。とりあえず、まぁ上着を脱いで横にあるメニュー表を とって一通りメニューをみてサラダと紅茶と魚介類のクリームスープパスタを頼もうとして、ちょうど近くにい た店員に声をかけたら偶然その女が近づいてきたのだ。一瞬、見たことある、な。と思って動きが止まってしま ったがそれもそれで不自然なのですぐにその場を取り繕ってサラダと紅茶と魚介類のクリームスープパスタを頼 んだ。その女は仕事用の作り笑いをして、もう一度オレが言った注文を繰り返し「以上でよろしいですね?」と 言ってオレがうなずいたのをみるとその場を去っていった。一瞬みえた名札には「」と苗字だけが書かれてい た。・・・どっかで聞いたことある。 散々考えて、はっ!とわかった。確か腕の鳴るヒットマンでその時によって雇い主は違うが、それぞれから莫大 な金を受け取り依頼された人間を確実にそしてすばやく始末してくれると、殺しはに言えば絶対確実と言われ ているフリーの殺し屋だ!なんでこんなやつがこんな人目に付ところで、金も十分あるだろうし生活していける ぐらいの環境もあるはずなのに、なんでわざわざ・・・こんな所で働いてるんだ?それとも、人違いか?いや、 それはない、な。少し賭けみたいなものになるが直接本人に話しかけてみるか・・・。まぁ人違いなら人違いで どうにてもなるだろうしな。とにかくタイミングを掴まなくては始まらないからな。 と、オレが色々考えている所に丁度注文したものが運ばれてきた。んでもって、やっぱり料理を運んできたのも「」だった。 まずサラダがテーブルの左に置かれ、次に中央、まぁオレの目の前にスパゲティーを置き最後に右に紅茶を置いた。 紅茶のすぐ横にレモンとミルクと砂糖が入った箱のセットを置き「ごゆっくりどうぞ。」と機械的ないかにも仕事用の笑顔で 去っていった。でも、オレは「」が去っていく時の一瞬の視線を見逃さなかった。今・・・明らかに見た、よな。やっぱりそうなのか? オレが跳ね馬ってわっかっているのか?あれはちょっと知っている。とかそうゆう次元じゃなくて、明らかに鋭い視線で、うん。 とにかく、またいろいろ考えながら注文したものを口に運び始めた。いや、まてよ。あの視線・・・。もしかしたら薬とかが入れられている かもしれない・・・。考えすぎか?いやそんなはずはない。スパゲティーのクリームソースを少し手にたらし特殊な液をかける。 反応なし、と。じゃあ平気か。慣れた手つきでスプーンとフォークを使いスパゲティーをすくい取る。さっぱりとしているのに ちゃんと味が口の中で広がり、チーズがかけてあるせいか濃厚な感じさえした。ちゃんとアルデンテでうまい。サラダも萎びてしまわないうちに 口に運ぶ。ドレッシングも手作りなのか?炒ったナッツが入っていてまぁうまい。紅茶は普通だった。この味でこの価格ならいいほうだろう。 食べ終わったものを近くの男の店員に頼みさげてもらう。ふーっと息をつき食休みをしながらも「」を注意深く観察する。 やべっ、今目が合っちまった・・・。でも「」はすぐ視線をそらし客を接客し続ける。だめだ、とてもじゃないが今日タイミングを 見つけるのは難しすぎる。そう思い、コートをもって会計を済ませ家に帰った。 そして、タイミングはいきなりやってきた。オレがスパゲティー屋にいって「」を見つけてから3日が過ぎたころ、何となく公園を 散歩していたら噴水の近くのベンチに座って読書をしている「」を偶然見つけた。オレはこの時、今しかない、と思い一気に 近寄り話しかける。一瞬、自分でもいきなり踏み出すことに躊躇したが動き出してしまったのでそのまま体は動く。 「あの、」 「!、はい?」 いきなり声を掛けられたことに驚いたようで、一瞬体をビクッとさせてから読んでいた本からすごい勢いで顔をあげてこっちを見てきた。 「」はオレの顔を見た瞬間に大きく目を見開き表情が止まったがすぐに表情を戻した。まぁ普通の人には気づかれないほどの 早業だったが。 「となり、いいか?」 「ええ、どうぞ。」 荷物を持って少しずれてオレの座るところを開けてくれた。 「えっと・・・なんでしょう?」 「んあ?ああ、ちょっと聞きたいことがあるんだが。」 「え?あはは、いきなり会った人に聞きたいことですか?」 あくまで正体はバラさず、初めて会ったかのようにするつもりか・・・。 「・・・はじめてじゃ、ないだろ。殺し屋の 。」 「・・・・。」 オレがいきなり真面目に声を落として言うと笑顔のまま表情が止まり、ふふっと笑い始めた。 「ふふ、あはは。・・・やっぱり、あなた跳ね馬ディーノ、でしょう?」 「あぁ、そうだ。」 「あーあ、まぁばれちゃってもいいかなー?どうせ私フリーでやってる殺し屋だしね。」 「やっぱりそうか。あの、お前この間の18日の深夜01:56オレと同じ敵を追ってただろ。」 「えぇ、そうね。」 「お前は、ほかの奴の敵にはいくら頼まれても手出しはしないと聞いたけど。」 「・・・・あいつは、」 といって言うのをやめてしまった。いったいなんなのだろうか。 「あいつ、は?」 「個人的に、恨みがあるだけ。そのおかげで嫌なこと思い出しちゃって不意を突かれて腹蹴られて、ちょうどその時に あなた、跳ね馬が来たの。」 「なるほど、な。」 「あなた、あいつの事倒してくれたのでしょう?」 「あぁ、裏の仕事だから消したよ。」 「そう、感謝しなくちゃね。ありがとう。」 「なんでだよ。」 そう聞くと黙って読んでいた本にしおりを挟み本を閉じてバッグにしまった。それからゆっくりと空をみて、口をひらいた。 「あいつに、両親殺されたの。私はまだ幼かった、目の前で殺されて赤い液が滴るナイフを私に突きつけて”お前は10年後だ。” とかいって消えていった。とても恨んだわ。その日から憎悪につつまれた私は一人で両親を埋葬し、家をきれいにして 自分のありったけの知識をフル活用して独自に殺しを学んだ。そう、あいつを殺せる日をおもって。でも、」 「失敗、した。」 「そうよ。馬鹿みたいね。」 「そんなこと、ねぇよ。」 「あら?そうかしら。私は、まだ井の中の蛙ね。もっと今以上に強くならなきゃ。殺しをためらわないためにね。」 「・・・・複雑だな。」 「いろいろと、ね。あ、ねぇなんで私なんかに話しかけてきたの?」 「ちょっとな、話しを聞いてみたかっただけだよ。」 「?よく分からないけど。」 「わからんくていいんだよ。」 なんだよ、、案外いいやつじゃねぇか。いろいろ事情は抱えているっぽいけどな。 「お前さ、一人で暮らしてんだろ?」 「もちろんよ。」 「あーのさ。」 「なに?」 「最近、いろいろと物騒だから、ちょうど屋敷いっぱい部屋空いてるからウチにこないか?」 「へ?え、いきなり?」 「あぁ、仕事ならたくさんあるしな。」 「・・・・それは、告白って取っていいのかしら?」 「ご自由にどうぞ。」 「さぁ、どうしようかしら。私、これでも結構強い女よ。芯もしっかりしているしね。」 でも、あなたと一緒に居るのも悪くないかもね。ちょうど、寂しかったし。 そういって、心からの笑顔で笑った。 アルデンテ ひさびさディーノ 倖 燗拿20070220 |