「ねぇごっくん。明日雪降るんだって。」 「らしいな。」 「ねー。だから今日こんなに寒いんだね。朝起きたらすごく寒くてびっくりしちゃったよ。」 「あぁ寒かったな。」 ふーむ。なんか返事が冷たいなぁ。とにかく、朝は寒かったのさ。こんないつもあるような会話してるけど、 じつわ今日は私が初めて獄寺に会った日なの。でも、多分獄寺は覚えてないんじゃないかな。覚えていてくれたら嬉しいけどさ。 最初の印象はちょっと怖そうだなって。(あ、カッコイイとも思ったよ!)でも、私がいつものへましてダイナミックに獄寺の前でこけたら すぐに近づいてきてくれてね、そこら辺に散乱したお化粧のポーチとかふでばことかノートとか点数の悪いテストとかいっしょに拾ってくれて 「ほらよ。」って渡してくれたの。ふふ、淡白な感じの言葉は私にとってはとても優しく響いたの。その時初めて近くでしっかりと 獄寺のこと見たらすっごく綺麗な顔をしててなんだろ、うん。世間で言う一目惚れ?みたいなのになった。私馬鹿ですぐに顔に出るから カーってすぐに耳まで赤くなっちゃって、本当に焦った・・・。それに気づいた獄寺が「・・・こけたぐらいでそんなに恥ずかしがんなよ。 別にオレはなんともおもわねーからよ。」ぽりぽりと頬を指でかきながら目線を少しずらして言ったの。こけた事で恥ずかしがって るんじゃないのにね。でもその言葉を聞いた瞬間に「あ、この人いい人なんだろうな」って思った、というか直感で感じた。 その瞬間にやさしくて、すこし恥ずかしがりやで、強がりで、ちょっと怖そうな獄寺に私は完璧に惚れてしまった。 それからが大変でどうやって獄寺と会おうかとかどうやって話そうかとかいっぱい考えた。一応同じ学校だったのが幸いした。 ずーっとなやんでて、私ね本を読むのが大好きで毎日と言っていいほど学校の図書室に通いこんでたの。 んで、偶然にもちょーど自分が座ってる席の前に獄寺が来たってワケ。突然の事で心臓飛び出るかと思ったけどゆっくりと 深呼吸をして落ち着いてから声をかけた。 「あの、ご、ごご獄寺くんですよね?」 「あぁ?」 「(ヒィ!)あの、こここの間は本当にありがとう御座いました!」 「(オレなんかしたっけ・・・。)は・・・?」 「えと、おととい私がこけた時に助けてもらって・・・。」 「あーあん時の。お前だったのか。」 「う、うん!」 「大丈夫だったか?オレあんなダイナミックなこけかたした奴はじめてみた。」 「あの、あれがいつもなんです、ます、はい。」 「・・・おまえ日本語めちゃくちゃだな。」 うおー!なにやってんだ私!ちゃんと日本語しゃべれよ。こうゆう時にかぎって呂律というものが廻らないんだから!ばかーん! 獄寺くんの前なのに!しっかりして、やっとまわってきたチャンスなんだから!こんなときに恥じかいてどうするの!! 「あ、そういや言っちゃわりぃけどおまえ国語苦手なのか?」 「はっ・・?」 「いや、この間お前の荷物拾った時テストもあったから・・・。」 「うそ!本当に!?ててて点数みた!?」 「・・・まぁ。」 ぶっはー!どどどうすんの私!あのテスト、スーパーウルトラハイパー悪かったんだよー!だってだって21点でっせ奥様! あぁー悪夢だったよ。塾の先生に怒られるは学校の先生に怒られるはで挙句の果てにそうゆう時に限ってお母さんにも 見られちゃうし。冬休みの課題がいけないんだよ!私が現代文苦手だっていうのに! 「ええええ、っと、忘れて!ね?ね?」 「たしか、2・・・い。」 「わっさっさーい!!それ以上言うなよ?な?な?言ったらてめー・・はっ」 なに口走ってんだ!やべームキになったらよろしくない言葉が口から飛び出ちまったぜ! しししかもコイツにやついている!ぜってーわざとだ、ぜってーわざとだ!くっそー! 意外に意地悪なんだな、獄寺くんて! 「なんだよ。」 「ぐ・・・苦手ですけどなにか?!現代文は嫌いなんです!」 「はぁ?現代文なんてよみゃー答え書いてあんだろ?」 「しらないもん!わかんねーもんはわかんねーんだよ!」 「たく、あんな簡単なもん・・・。しゃーね、お前今国語の教科書もってるか?」 「は?う、うん。一応・・・。」 「ちょっと貸せ。とき方のコツ教えてやる。」 「えええ!そんないきなり!」 「なんだよ。おまえそのまま点数悪いまんまでいいのかよ?」 「・・・よく、ないです・・。」 「だろ?お前、名前は?」 「・・・。」 「うし、おらよく聞いてろよ。」 「あ、りがとうございます・・・。」 そんなこんなで、微妙な感じで獄寺と会えて話せてなぜか一緒に勉強会みたいのしてまぁ成り行きで付き合うようになったのよ。 でもほんとに獄寺の頭のよさにはいつも驚かされるもんだ!なんであんなに頭がいいのか疑いたくなるね!授業だって あんまり聞いてないみたいだしノートとかも特別取ってるわけでもないのにあてられたらスラスラ答えられてるし・・・・。 おまけに教え方もハンパなく上手い。きっと現代国語の白田先生より教えるのうまいよ!すげーよ。獄寺の指導のおかげで 現代国語の成績は21点から86点まで上がって。塾の先生も学校の先生もまたまたお母さんもびっくりしてた。 ふう、過去話はコレくらいにして。さて、ずいぶん獄寺の家にも長居しちゃったしそろそろおいとましようかね。 このままだと本当に雪降ってきそうだし。 「うあー。なんか今日のごっくん冷たい・・・。」 「いつもどうりだろ。」 「む!もういい今日は帰る!」 「は?!」 「なに?なんかあるの?」 「送って行くからちょっとまってろ。」 「嫌。結構です!」 私がぷりぷりおこりながら(わざとだけど)玄関の外に出たら雪がちらほら降り始めていた。今年の初雪。 ガチャッとすぐうしろで玄関のドアが開いて獄寺が出てきた。走って帰ろうとしたら腕、つかまれた。 そのまま獄寺のなかへもたれこんだ。 「ちょ、っといきなりなに!」 「だまってろ。」 ぎゅうっと抱きしめられて心臓とか肺とかつぶれそうになった。おまけに顔は獄寺の胸板に押し付けられているわけで。 ただでさえそんなに高くない私の鼻までつぶれそうになった。そしたら一瞬コートのポッケのなかに何か入った。 「・・・なに、いれたの?」 「さぁな。帰るんだろ、おら」 気になってポッケに手を突っ込んでみる。うーん、感触的には冷たくて硬い。丸っこい感じがする。っとすると指輪・・・かな? ちゃんと、覚えててくれたんだ。 「ごっくん・・・。」 「なんだよ。」 「ありがとう・・・。」 「いきなりきもちわりーやつ。」 「しね。」 「・・・おい。」 「うそ、大好き。」 「なっ・・・!」 あっははー。すぐ顔赤くなる所が獄寺のうぶいところだよね。かわいーかわいー。 それで、さりげなーく獄寺の手を握ったら、黙って獄寺も握り返してくれた。 雪はどんどんふってきて道はうっすらと白くなってきていて、二人が吐き出す白い息は 雪とともに空気に解けていった。 雪の中、足跡、 指輪、貴方、私。 一週間ぶり。獄寺は甘酸っぱい奴だと思う。 倖 燗拿20070124 |