「ひばり、」 「ああ、。」 ひばりってば家に行っても出てきてくれないから学校に来てみたら 休日なのに応接室で雑務をしていた。草壁さんとかも居なくてひばりが 一人だけで仕事をこなしていた。 「家に行ったら居なかったから学校にいるかと思って。」 「連絡しておいてくれればお茶でも用意しておいたのに。」 「したよ。」 「え、あ。気が付かなかったよ。」 ごめん、と携帯を弄りながら伏目がちに微笑むからその瞬間すごく胸が高鳴った。 逆光の中のひばりはとても綺麗でやわらかい感じがした。 少し開いた窓から生ぬるい風が少しづつ入ってきて窓の端に寄せられてあるだけのカーテンを揺らす。 「で、何の用だい?」 「あ、うん。」 またこの男は自分の誕生日を忘れている。毎度毎度。去年だってそうだ。しかも誕生日を聞いても教えてくれなくて。 無理やりききだしたら、顔を真っ赤にして応接室から出てっちゃうんだもの。可愛くて仕方が無かった。 その後草壁さんが応接室に入ってきて、どうしたんですか?って尋ねてくるから事の経緯を説明したら苦笑して、 恭さんらしいですね、と言ってきた。 「今日、誕生日でしょ。」 「・・・・。」 「忘れてたの?」 「どうでもいいことだからね。」 「どうでも良くないよ。だってひばりが生まれた日だもん。」 「そう。」 とそっけない返事をする。逆光で表情が上手く汲み取れない。 「そうそう、甘いものはあんまり好きじゃないって言ってたから、今年は和菓子を買ってきたの。」 私がそういうと、ペンを止めて顔をあげる。 「ふうん、見せて。」 一応有名な和菓子店のものを買ってきたのだけれど、気に入ってくれるかな。ひばりのお家はお茶の総本家だからなぁ。 「うん、ありがとう。ここのお店のものは好きだよ。」 「そっか、良かった。」 「早速食べようか。僕も休憩としよう。」 「うん。」 ひばりの白くて細くて長い綺麗な指が和菓子の入った箱を持って隣の給湯室に入っていく。私はそれを追いかける。 急須を取り出してお茶の準備を進めるとひばりは丁寧な手つきで和菓子を木の皿に移していく。 (慣れてるなぁ。) 「お盆に載せて持っていくからひばりは座ってて。」 「うん。」 お茶を入れ終えてお盆にお茶と和菓子を置いて応接室のソファの前のテーブルに持っていく。 「はい。」 「どうも。」 「じゃあ、ひばり。お誕生日おめでとう。」 ひばりはちらっと私のほうを見て和菓子に手をつける。 「なんか言ってくれないの?」 「別に。」 「照れてんの?」 「うるさい、」 (・・・か、可愛いなこいつ!) 「っ、あはは!ひばりかわいー!」 「うるさいな、咬み殺すよ。」 「わーこわ。」 棒読みでそう答えるとため息をついてお茶をすする。 「なんか、プレゼントしたかったんだけど・・・ひばり、何が欲しいか分からなくて準備できなかった。」 「これで十分だよ。そんなに気を使うほどのことでもないし。」 「でも・・・。」 しょげる私を見てひばりは立ち上がり私の隣にストンと座ると二人分の体重をうけたソファがすこし沈む。 ひばりは何も言わずにスッと私の後頭部に手を添えるとそのまま強引に口を近づけてきた。 シンプルに、一瞬口が触れただけのキス。耳元でひばりが口を開く。息を吸う音さえ聞こえるくらい近くで。 「、一度でいいから”恭弥”って言ってごらん。」 「え、あ、きょ、きょーや。」 私が言われたとおり名前を呼ぶと満足したみたいな顔で私から離れて向かい側にまた座る。 「。」 「はい!」 「明日から名前で呼んでね。」 「え?!」 「誕生日のプレゼント用意してくれてないんだろう?」 「う、」 「だから、ね。」 私の目の前で意地悪そうな顔で笑うひばりがなんだかムカつく。 絶対私で遊んでる。でもキスされたのは初めてだった。 「うん。ねぇ、ひば・・・きょーや。」 「なに?」 「、スキ」 「知ってる。」 A caro Lei 2009/05/06 seaone タイトルはイタリア語で「大事な君へ」です。 こんなのひばりじゃねえええええええええええ!(震) |