夏の河原は騒がしい。子供たちが水遊びをしている。 私は浅瀬にて、足だけ水の中へと沈ませる。 「冷たい・・・。」 夏の暑さとは別に河の水はとても冷たかった。私は大きな麦藁帽子を深くかぶって、誰にも 悟られないように思い出す。つい、一時間前のことを。目を閉じるとすぐに顔が浮かんでき て胸が掴まれたみたいに苦しくなる。どうして、こんな、苦しいのかな。 じゃり、と言う音とともに私の周りに一回り大きい影ができる。麦藁帽子が大きいから 頭を上げても影の主は見えない。振り向こうとすると、帽子を取られる。 「わっ!」 「こんな所で、なにしてるの。」 「涼んでるの。」 「じゃあ僕も涼もうかな。」 「ひばりが?珍しいねぇ。」 そうかな、と言うと私にまた帽子をかぶせる。はいていた真っ黒なズボンの丈を短くして、 真っ白な肌を業火のような太陽にさらけ出して澄んだ水の中へと沈める。 「ワォ、冷たいね。」 「でしょう?」 「一人できたの?」 「うん。一人が、一番好きだから。」 「僕も群れるのは嫌いだからね。その理由には同感だよ。」 「私と居るのは群れてるわけじゃないの?」 「必要だから、話してるだけだ。」 「必要・・・?」 必要、ひつよう、ヒツヨウ?ひばりにとって私と話すことが必要なことなのかな。 私が風紀委員だから?でも秘書みたいなもんだし。(しかも無理やり入れられた。) 「なんで?」 「さぁ、僕にも分からないな。ただ、なんとなく・・・。」 「・・・なんとなく?」 「話したかった。」 「そっか。」 ちらり、私はひばりの横顔をみる。綺麗な横顔。くっきりとした鼻筋、まっすぐとした瞳。 白い肌、余計に暑くなりそうな真っ黒な髪。いつまで見ていても飽きないなんて不思議。 「ねぇ、ひばり。夏は好き?」 「あまり、好きじゃない。汗でべたつく。」 「そっか。」 「でも、が好きって言うなら、好きになってもいい。」 「え?」 水の中に沈めた私の左足とひばりの右足がぶつかる。 ひそかな願い、ひとつだけ。 ただ、うだる暑さの中で貴方だけがはっきりと見えたから。 涼しそうな顔して、その首筋に光る汗を見たならば。 私は願おう。夏が永遠であるように。 密か、目を閉じる。 微妙、、、早く好きって言えばいいのに・・・! 20080606 杵多 |