春特有の暖かい風が桜の香りを含ませて応接室へと入ってくる。今、僕とだけ。



「ひばりー応接室っていいねー。」



急にの間延びした声が窓際から聞こえた。僕は、いつも通り風紀委員の仕事をこなしていた。 最近は寒ささえもあまり感じられないほどに暖かくなった。今日なんてTシャツで居たって大丈夫な ほど暖かかった。桜はもうほとんど散ってしまっているが時折風に煽られてヒラヒラと花びらが室内へと入ってくる。



「どうして?」
「居心地がいい。窓から見える桜の木が素敵。それと、」



くしゅん、とのくしゃみが聞こえた。



「それと?」
「ひばりが居てくれるから、なお素敵。」
「そう。」
「うん。」



一瞬変な事を言うからびっくりしたけど、そこは冷静に流しておいた。でも、表情には出るもんだ。ちらりと窓の方へと視線を 向けると鼻歌交じりに窓枠に寄りかかりながら窓の外を見ているので大丈夫そうだった。鏡を見なくても分かるほど自分の 顔が熱い。きっと真っ赤だ。耳まで、真っ赤だ。くそ、早くもとに戻れ。肌が白いから余計にめだつじゃないか。ああ、どうにかなれ。



「あはは!」



いきなりが大声で笑うからびっくりした、本当に。赤くなっている所見られたのかと思った。でも、外に向かって笑っていたみたいだったから 助かった。赤くなってる所なんて見られたら笑われるに違いない。



「ふふ!どうしたの?」
「なにが。」
「さっきビクッてなってたから。」
「べつに、こそさっき何をあんなに笑ってたの。」
「ひばり、怒るから言わない。」
「そう・・・咬み殺されたいの?」
「さー、どっちにしても私咬み殺されそうだよ。」
「言ってごらん。」
「私が言った言葉、嬉しかったの?」
「なんのこと。」
「だって顔も耳も真っ赤。顔に出やすいんだね。」



最悪だ、見られてた。しかもさっきの笑いは僕が赤くなっていることにだったのか。すごく、不快だ。いやでもすぐ顔に出る僕もわるいのだ。 でも、まんまと引っかかってしまった。どうすればいいんだ。あ、黙らせよう。ずっと笑っているから。僕はがたりと応接室の椅子から立ち上がりの 方へと寄っていく。



「なに?やっぱり私咬み殺されちゃう?」
「うん、咬み殺してあげる。」



息が出来ないほどに近づいて吸い込まれるかのようにその口へと咬みつく。
与え合うより求め合うより差し伸べて分かち合えれば良いと思う。
だから、違う意味で咬んで、呼吸する事を殺した。



「ほら、咬み殺した。」
「うん、殺された。」
「わらったね。」
「うん、ひばり可愛い。」
「嬉しくない。」
「そうだよね、ふふ!」
「笑うな。」
「だってひばりすぐ顔に出るから。」
「悪かったね。」
「悪いなんていってないもん。真っ赤だね。白い肌に良く合うよ。」
は顔に出ないね。」
「出ないように頑張ってるの。」
「どうして。」
「ひばりが意地悪するから。でも、本当は私だってひばりが見てないところで赤くなってるんだよ。」
「じゃあ、頑張るのやめて僕の前で赤くなりなよ。」
「嫌だよー。恥ずかしいもん。」
「じゃあ僕はどうなるんだよ。」
「そっか、うちらさすぐさ、顔が赤くなるから林檎みたいだね。」
「馬鹿言わないでよ。」



親ばかならぬ彼女ばかかな。すごく可愛い。初めて僕の前で赤くなった。もっと近づきたい。そばに居たい。キスもっかいしたい。 そんな風に思ってたらが僕の頬に手を当ててきてからキスしてきた。僕はびっくりしたから目を見開いたら、は涙目で 笑う。桜の花びらが飛んできての前髪あたりで止まった。だから、花びらに合わせて額にキスして屈んでの顔見るとも 真っ赤だった。そして言うまでもなく僕も真っ赤だ。そのまま頬を摺り寄せて、抱きしめて、春の強風に煽られて僕らはカーテンに囲われて 応接室の中はカーテンごしの僕らの影だけ床に映っていた。僕らが付き合い始めて一年目。今日。すきだよ。は僕が一番知ってる。










赤く染まれ、僕の君




短いですね、ぎゅーっとした愛を求めています。

倖 燗拿20070422