誰でしょう、誰でしょう、誰でしょう。 ふわりと、白くすらりと細い指先が目の前に現れたと思えば一瞬にして目の前は暗くなった。 景色の変わりに聞こえたのは高くもなく低くもなく透き通る声が耳に飛び込んできた。首筋にかかる吐息。 背中を伝わってくる鼓動。それと、得体の知れない感覚。よく、聞きなれたの声と香りが伝わってきた。 「誰でしょうかー。」 「、馬鹿なことはやめてよね。」 「そう?」 「答えを言ったんだから手を離して。」 「いや。あんまり恭弥の顔触れないから触っとく。」 「なにそれ。」 離さないって言ったくせにすぐにするり、と目から手を退けて僕が座っている机の目の前に座って若干黒目が大きい目で じっとみてくる。僕はチラッとみてまた書類に目をもどす。は僕の机の反対側に頬杖をついて少し目を伏せてこういった。 「もし、さっきみたいに行き成り暗くなって前が見えなくなったら?」 「・・・困るだろうね。」 「ふむ。じゃあもし、ゆっくりと、だんだん薄れていくみたいに私が消えていったら?」 「・・・困る、かな。」 「・・・・。曖昧。」 「ごめん。」 「ゆるさない。」 「・・それじゃ、どうしたらいいのかな?」 は伏せていた目を僕のほうに向けて、だんだんと大きく目を開いて少し涙を溜めてまた伏せた。溜まっていた涙がぽたり、と 頬を伝った。その、表情はとてもそそられるものがあったし、とても魅力的だった。だから、とがつぶやいて、僕が書類を置いて、 片手に持っていた鉛筆もおいて、はまた僕の目をみる。 「私が消えないうちに沢山触れて、沢山愛して欲しいなーって。」 「ふうん。だから、僕にも沢山触れて、僕のことも沢山愛してみたいの?」 「うん。持てる力を十二分に使って、ね。」 「つまりは?」 「つまりは、好きと愛してるで哀してるってところかな。」 「そう。」 「うん。」 こぼれそうな、愛でつないでいて 哀してるは”あいしてる”です。 倖 燗拿20070626 |