笑ってごらんよ、話してごらん。君には笑顔が似合うよ。 今夜は踊ろう、素敵なドレスを身にまとって歩き出そう。ワルツを踊ればいい。 僕はただ君に近づきたいだけなんだ。夜更けの紅茶を冷まして、嘘でもいいかな。 できるだけの話をして、もう一度。近づきたい。くたばれって誰かが言っている気がするよ。 悪魔が手招きして、目を細めた嫌な笑いで誘うんだ。僕を惑わすんだ。 「さん?」 「はい、なんでしょう。」 「お暇ですか?」 「どうでしょう、退屈はしています。」 「少し、お話しませんか。」 「えぇ、あなたお名前は?」 「六道 骸と言います。」 「ロクドウ、さん?」 「はい。」 「めずらしいわね、いいわ。話しましょう。」 「お隣、失礼します。」 「どうぞ。」 暇を持て余した者達が無意味に何度も毎夜ささやかなパーティーを開き、一晩中踊り、飲み食い 皆キチガイのようになる。その中では毎回参加してるくせに退屈そうにしている。僕は一度パーティで を見かけてから何度も後を追っていた。たまに見せる笑顔を見たときは僕は何か変になった。 「毎回、パーティーに参加していますね。」 「あら、知ってたの?」 「はい。こんな事言うのもなんですが、いつも退屈そうですね。」 「ふふ、家にいるよりはましよ。」 「そうですか。」 「ねぇ、暗闇って怖いかしら。」 「何を、いきなり?」 「なんとなく、ロクドウさんは怖い?」 「そう、ですね・・・馴れてしまいましたね。」 「・・・馴れるものなの?」 「普通は違いますね。」 「そうよね。」 そういっては少し寂しそうな、と言うか一瞬目の輝きを失いぼーっとし始めた。 過去のことでも思い出しているのだろうか。僕は近くのボーイに暖かい紅茶を持ってくるように いった。少しするとボーイが丁寧に少しの菓子を添えて持ってきてくれた。はまだぼーっとしたままだ。 僕はの手をすこし、握った。するとびくりと、目を見開き体を震わせこっちを見た。次の瞬間には泣いていた。 手はつながれたまま。は流れてくる涙を拭わない。手に力が入る。今まで人に感情移入などしたことがなかったのに 何故だかにだけは、してしまった。僕は、思い出したかのように紅茶をすすめる。 「紅茶を、」 「ありがとう。」 「大丈夫ですか、砂糖も入れて。おちつきますから。」 「ありがとう。」 「涙を、拭かなくては。」 「大丈夫よ。そういえば下の名前を伺ってなかったわね。」 「あぁ・・・骸といいます。」 「骸・・・呼び捨てでいいかしら。」 「どうぞ。僕はあなたをと呼びますから。」 「どうぞ。骸はこの後お暇かしら。」 「限りなく。」 「私の部屋に来ませんか。あの、決して疚しい意味はございませんから。」 「よろこんで。」 はっきりいって、部屋に招かれたことには驚いた。まぁ僕からすればうれしいことだけど。はきっとさっきの 涙で何かを感じたのだろう。暗闇について訪ねてくるぐらいだからきっと恐怖なのだろう、黒が。少しばかり 車を進めるとわりと大きな屋敷がみえた。 「誰もいないから、気にしないで。」 「そうですか。」 「あのね、なぜ屋敷に招いたかと言うとあなたなら安心できると思ったから。」 「安心・・・。」 「そう、私ねひとりぼっちなの。だから暗闇が怖くてね。」 「僕も一人身ですよ。」 「でしょうね。骸さっき私の手を握ってくれたでしょう。その時に思ったの。」 「僕と一緒なら安心と。」 「その通りよ。骸が暇だと言ったから退屈かもしれないけど、私が眠りにつくまでそばに居て欲しいなと。」 「いいでしょう、眠りについてもつかなくともそばに居ますよ。」 は笑顔でこちらをみた。でも、寂しくて泣き出してしまいそうな笑顔だったのだけれど。 「恐ろしい闇をなかったことにしたいの。」 「それは難しい話ですね。」 「・・・敬語はやめましょうか。」 「いえ、僕はクセなのでは気にせずにどうぞ。」 「ありがとう、こうやって真っ暗な部屋にいるのが怖くて毎日パーティーに参加していたのだけど 誰かがそばにいてその人の暖かさが感じられるだけでこんなに安心するものなのね。」 「それは、よかった。僕も安心します。」 「はは、骸こんな事言ったらあなた困るかしら。」 「何でしょう。」 「すき、よ。って」 「いえ、むしろ望んでいた言葉ですよ。」 「よかった。」 貴方に近づけた夜はとても、よかった。始まりもないし終わりもない。僕は君に近づけたんだ。 を安心させて笑顔にしてあげた。暗闇が怖いなんていわないで、僕がいつだってそばに居る。 僕たちは、4ヵ月後結婚をした。は笑顔で二人くらい子供が欲しいといった。 ダーティーな世界 う、うーん。長い。もはや、だれ? 20071118鵠沼 杵多 |