海にきたならば、ぎらぎらの太陽がまっているでしょ。いつもは見れないほどの大きな 空が広がっていて、途切れ途切れの微かな雲が空に広がっていて潮風がツンと鼻に届くの。


「ね!了平、海行きたいと思わない?」
「おお!極限に夏だもんな!賛成だ!」
「・・・でも、部活あるでしょ?」
「いや、今度の土日は休みでな!」
「そうなの?うーん、折角のたまの休みだし・・・やっぱプールにしよう!」
「いいのか?」
「うん!どっちかっていうと一緒にいられれば、いい。」
「!あ、ああ。」


プールならカルキの匂いでしょ、太陽が水を煌かせて眩しいでしょ。 狭いのに深くてそこだけ別のとこみたいな楽しさがあって、二人だけで プールサイドで座れたら言葉は交わさなくても素敵な気持ちになれると思うの。


「あー、。」
「ん?」
「なんだ、いつも、わるいな。」
「どうしたの?いきなり。」
「いや、なんでもない!帰るか!」
「はーい。」


むせ返るような暑さの夏の午後。ボクシング部の部室の前で了平が荷物整理をしてる横で その約束はされた。私の額にも了平の額にも汗がにじんでて、ああ暑いな。っていうのが 本当に感じられた瞬間だったと思う。私は了平の横をぴったりとくっついて歩く。 暑いのは百も承知で、それでもそばに居たいって思うからなのね。すこし汗ばんだ自分の手のひらで テーピングでぐるぐる巻きの了平の手にふれてみる。そしたら、了平、こっちをちょっとみて 笑いながら何も言わずに握り返してくれた。そのときの心臓の高鳴りは脳まで響いた気がする。 それを感じ取ったかのように道に沿って植えられている木々の上で命をかけて鳴き続ける蝉たちの 鳴き声がより一層大きくなった。


「蝉すごいね。」
「おお。」
「あ、」
「どうした?」
「了平って泳げるの?」
「馬鹿にするな!泳げるぞー!」
「はいはい、じゃあ競争しようね。」
「望むところだ!」


あはは、面白くて笑ったら少しバツの悪そうな顔して苦笑い。
もう、かっこいいなぁ。うん、私おぼれてる。海でもプールでもなくて了平に溺れてる。
了平も私に溺れてくれてたらいいのに。

そうしたら一緒に笑うんだ。
大好き、好き、暑い夏は了平への熱い気持ちと同じだから好きなんだ。






蝉時雨、



    溺れた私







2008 0731 潮音 初、了平。