いつかなるべく早くにこの方向音痴をなおさなくては、と思ってはいた。
でもでもまさか!
我が家で迷子になるとは思っていなかったんだ!
「くそ…。お父様恨んでやる…!」
久しぶりに里帰りしたとはいえ、完全に油断していた。
…なんてったって、この家は『城』と呼ばれるほどの広さなのだ。
「どうすんのよ、本当…。」
ボーッとつぶやいて座り込む私。
イタリアに建てられたこの邸宅は、私の父親のもの。
ちょっと散歩に出かけたらこの有様だ。
「情け…な…。」
いけない、
いくら暖かいからってこんなところで寝たりなんかしたら、私見つけてもらえないんじゃ…、
ていうかここは一体全体どこなの!?
そこで私の視界はブラックアウト
「ちゃん…姉ちゃんッ!!!!」
「うわぁっ!?」
「!!そこか!!」
すぐ近くで人の気配がして勢いよく振り返れば、私の弟…獄寺隼人が垣根の間から顔を出した。
ふぅ、と安心したように息を吐き、こちら側へとやってくる。
「なにしてんだよ」
「………迷子」
「ばっっっっかじゃねェの」
「うっさいなぁ!大体さ?この屋敷が広すぎるから悪いのよ?」
それを聞いた隼人はブッッと思い切り噴出した。
「自分のせいだろ、自分の。」
手ェ、かせよと言うから自分の手を彼の手の上にのせ、引っ張って立たせてもらう。
「隼人、今…お姉さまのこと『』とか呼び捨てにしたわね…」
「んなっ!?てめッ…、…姉ちゃんが急にいなくなるから、こっちは心配して…。」
「あら。心配してくれたんだ?」
「/////」
真っ赤になった隼人は顔を背けた。
いまだにクスクス笑い続ける私を横目で少し睨んで、彼は文句を言う。
「18にもなって迷子になってんじゃねぇよ」
「…隼人より2つも年上なのにねぇ…。自分で情けないわ…」
「たっく…。元はと言えば俺に何にも言わねェで出て行く、が…悪い…!」
「また呼び捨てー!」
「―――――いんだよッッ」
のせてあった私の手を隼人はいきなり握り締めて歩き出した。
そのままの勢いで私はひっぱられる。
「隼人」
「あ゛ぁ゛?!」
「探しに来てくれて、ありがと」
「―――――別に」
照れたように私から目をそらした隼人に、私はまた笑みを零す。
大きな手、
大きな背中
「大きくなっちゃったなぁ…。」
「悪ィのかよ?」
「いーや?でも…お姉ちゃんはおいてかれたような気がして哀しいです…。」
妙に寂しい気持ちになって、しょんぼりとうなだれる。
急に隼人がまた手を握り締めてつぶやいた。
「バーカ」
「うっわ!なにその言い方?!」
「だからはいつまでたってもお子様なんだ」
「は…?なにが?」
「でかくなんなきゃできねェこともあんだよ!!」
「? ? ?」
ま、わかんねーかっ!
そういって隼人はやけに大人びた笑顔を浮かべる。
「隼人の方が…子供なくせに…。」
その日、大好きな私の弟はとてもまぶしく見えた。
背中がやけに大きくて
(その夜は、ビアンキ姉と可愛い弟の早すぎる成長を嘆いた。)
(2007,11,27).早瀬→Una persona adorata!さまへ提出! 感想は反転↓
新鮮味のある企画でした!最初はどうしようか悩んでいたお話が、隼人に決めるとなぜかものすごい速さで完成…。
隼人君がさんのことを呼び捨てにしようとしてるのは、対等に見られたいからとかなんとか理由をつけたい…(笑)。
楽しい企画、ありがとうございましたー!!