野球部は練習が終わると各自で自主練するひとも居ればさっさと家に帰ってしまう人も居る。 私は、一応マネージャーだから部員がみんな帰るまで残って、空いた時間はスコア整理を したりボールを磨いたりとなにかしら仕事はあるのでそうゆうのをこなしている。気がつくと いつの間にか太陽は隠れて月が空に浮かぶくらいの時間になっていて、それでも一人でがんばって 練習をしている部員が居た。私は仕事がなくなってしまったからずーっと練習してる姿を 見ていた。すると彼は私が見ているのに気がついてベンチの方まで走ってきた。 「山本、毎日がんばるね。」 「おぉ!、おまえもう帰ってもいんだぜ?」 「うん、でも一応部員全員の帰りを見届けたいから。」 「そっか・・・うっし!」 「?」 山本はなにやら気合を入れてニッと笑ったかと思えば私にグローブとボールを渡してきた。 「一緒にキャッチボールしようぜ。」 「え?」 「こっちでやろーぜ。」 「う、うん!」 私は山本につれられてマウンドの方まで移動する。私はピッチャー役で山本がキャッチャー役 でやるみたい。山本が手を上げて合図をしてきたからかるーく投げてみる。ゆるく、お遊びみたいに それを何回か繰り返してみる。 「、一回全力でなげてみろよ!」 「えー、あたしノーコンだからやだ!」 「ぜってーとってやっから!」 「・・・・一回だけね!」 「おう!」 山本め!いきなり何をいいよるか!と思ったけど言われたとおり全力でボールを投げてみる。 案の定ありえないような方向に飛んでいってしまった。でも『ぜってーとってやっから』という 宣言どおりダッシュとスライディングのコンビネーションを駆使して見事あたしのヘナチョコ ボールをとってくれた。山本は満面の笑顔であたしのほうに息をきらしながら戻ってきた。 「ほら、とれたろ?」 「うん!す、ごい!てか、あたしすごいノーコン・・・。」 「っはは!確かにな。」 「む!」 「でも、いんだよ。一生懸命投げられれば。」 「そうだね、みんな部活がんばってる姿ほんとにかっこいいもん。」 そういうと山本はそっか、いつもありがとな。なんていうから自分のいった言葉がやけに恥ずかしく感じてしまった。 「マネジだし、がんばってる野球部のみんなを支えるのが仕事ですから。」 「ははっ!なぁ。」 「うん?」 「オレな、さっきお前が投げたボール取りに行く途中ちょっと焦ったんだよ。」 「どうして?」 「もし取れなかったらどうしようってな。」 「べつに、遊びだったしへんな方向行っちゃってたし・・・。って、山本?」 「いや、なんでもねーよ。帰ろーぜ!」 「あ、あぁ!まってよー!」 くしゃっと私の頭をなでると走ってベンチの方へ行ってしまった。その後を追うように 私も走る。ベンチに戻って一緒に片づけをしていたら目があってしまって、なんでか気まずくて 目をそらしてしまった。そしてゆっくりと視線を戻すと山本の顔が少し赤かった。 え、これってなんだろう・・・う、自惚れてもいいのかな。 「や、山本!」 「ん?」 「あの、う、自惚れてもいいかな・・・!」 「!」 「さっきの、さ。」 「・・いんじゃねーかな。」 「やま、もと。」 「がそう言うなら、オレも自惚れていいか?」 「う、ん!」 あたしが頷いたらすぐに山本に引き寄せられて、苦しいくらいに抱きしめられた。 耳元で囁かれた言葉は辛い練習とは裏腹にひどく甘いものだった。 惑星 にゆられて (自惚れすぎて笑えるほどに。) な、なんだこいつら・・・!← というかうちの山本君は山本君じゃないですね・・・。 20080322 鵠沼杵多 |