じーわじーわ… 暑いなぁ…蝉の声がうるさい。汗がだらだらと額、頬、顎と輪郭をなぞって落ちてきてはカラカラに乾いた校庭 の地面に吸い込まれていく。空には夏のむさ苦しい暑さの元凶となる太陽がギラギラと容赦なく照っている。か きーんとバットにボールが当たる音がした。あぁ…なんでこんなクソ暑い中ユニフォーム着て、如何にも蒸れそ うな帽子を被って、校庭中を走り回って野球ができるんだか…。元気だなぁ。まぁでも私もここを離れるわけに はいかないわけで。あれですよ、要は私は野球部のマネージャーさんをやっているんですよ。ちなみに一応山本 武君の彼女なわけですよ。いや、マネージャーになったのはもともと野球が好きだったっていうのもあるんすけ ど、まあやっぱり彼氏の格好いい姿を見たいじゃないですか!キラキラとあの少年の様な笑顔と(※実際にまだ 少年ですね。ん?青年?)素晴らしい運動神経をもってボールを追いかける姿!それだけでウハウハですよ。で 、武は武で必殺爽やかスマイルと丁度いい具合の天然さ。それなのに気取らず意外にも頭があまり良くないとい うストライクゾーンまっしぐらな所が男女構わず大人気なわけで。そんな素晴らしい武が彼 氏ってのも嬉しい反面苦労も多いわけで、周りから色々な事を言われたりされたり…やんなちゃうんだけど最近 はもうめっきりありませんね!なんてったってみんなが居るのに武は私がなにか言われてるのを聞いてキレてみ んなに一喝しちゃったんですから!あの時は私までびっくりしちゃって色々大変だったなぁ…でもやっぱ「俺が を好きで何が悪ぃんだよ、お互い好きで付き合ってんのにお前等になんの関係があるんだよ!なんで文句な んか言われなきゃいけねぇんだ。がとやかく言われる筋合いなんかないだろ!……」わー!どーのこーの。 みたいな、こんなニュアンスの言葉を言ってた気がする…あの時は辛かったから武が言ってくれたその一言がと ても嬉しかったんだよね。良い思い出だー。それ以来いままで以上に武が好きになったし何かを言われたりする 事は無くなったし。むしろ、その喝が更に武の株をあげちゃって女の子たちは「あそこまで彼女の事を思うとか 山本くん一途で素敵!」とか言ってて流石武ですね。彼女からみればイライラしちゃうけど…。(※ヤキモチと 言うものですね。じぇらしー!違っ)でも、その時の武は武みたいじゃなかったから驚きと いうかキレると人ってここまで変わるもんなんだなぁとね。えへへ結構思われてたんだなって分かって嬉しかっ たな。 まぁ過去話はどうでもいいのでこれくらいにして。とりあえず私は野球部なマネージャーで武の彼女なわ けでこの真夏の熱っつい学校の校庭で野球部を見守ってるわけです。あ、でもあれだ14:00で部活終わりだから もう終わるか。ピーっと部活の終わりを告げる先生の笛がなってみんなが一斉に部室前へと集合する。先生が今 日の反省と明日の部活の事片付けの事を言って部活は終わった。私たちマネージャーは部活が終わった部員たち にタオルとスポーツドリンクを配る。一時間くらいして野球部員がみんな帰ったら部室を綺麗に掃除して整理整 頓をして自分たちも帰る用意をする。武はまた当番でもないのに片付けを手伝って、素振りをしていた。私が帰 る準備おわったよって声をかけると「うし、じゃあ俺も帰る用意してくっから待ってろよ。」と言って部室の中 へ。武を待ってる間だれも居ない学校の中庭にある自動販売機の所へ行ってペットボトルのカルピスを二本買っ た。部室前に戻ると武が外にいて待って居た。 「ごめんね、飲み物買いに行ってたの。」 「言ったら一緒に行ってやったのに。」 「あはは、大丈夫だよー。はい、カルピス。部活お疲れ様!」 「お、サンキューな。」 武らしい明るい返事をして私から外の気温とは違ってとても冷えたカルピスを取っていった。ペットボトルの口 をひねるとプシュ!っと良い音がして蓋があいた。それを口に運ぶとゴクゴクといかにも美味しそうな音がして カルピスは喉の奥へと入っていった。 それからは、会話という会話もなく長い沈黙のまま二人で学校をでる。まだ無言。カルピスを渡して学校をでて から10分はもう経っているだろう。自分も話しかけるタイミングを逃してしまったし、武はなにを考えてなにを 今思っているか分からない。だから話しかけるにもかけられず…。ただ黙って黙々と少しぬるくなったカルピス を飲んでいるしかないのだ。もやもやと考えていると、いきなり武が私の手を握ってきた。さっきまでカルピスを 握っていたからか武の手は少し冷たかった。とりあえず、握り返す。すると武がたちどまった。 「どうしたの?」 「いや、別に。つか、暑くないか?」 「うん?まぁ夏だしね。」 「じゃなくて、手が。」 「うん、ちょっと暑いかもしれないね。」 「なぁ。」 「なぁに?」 武がいったん黙る。じっと私を見つめてきた。少しドキッとする。 「好きっていつまでつづくだろうな。」 「どうしていきなり?」 「・・・オレは、永遠だと思うよ。」 間の前が暗くなる。 武の顔のせいと、自分で閉じたまぶたのせいで。 やわらかい口びるが私の口にぶつかってふにゃっとなる。 いつもより少し長かった。ゆっくりと離れていく。息がかかる。 そのあと、武が大きな手で私の目を隠した。 「が、好きすぎて変になりそうなほどだよ。だから好きは永遠だとおもう。」 「そう、なの?」 「いつか、近いうちにの事好きから愛してるに変えたい。」 「・・・いつでもいいんだよ。私だって永遠だと思うから。」 「そうなのか?」 「うん。顔が見たいよ、手を離して?」 「だめ。」 「どうして。」 「今の目なんかみたら押さえられないから。」 「ふふ!いいんじゃない?本能のままで。」 「少しは、ためらえよ。」 「無理だよ、私はもう武のこと好きじゃなくて愛してるだから。」 「すっげー殺し文句だよ、。」 「カルピスって、甘いね。」 もう一度、キスをされたよ、夏の暑い午後4時のこと。 夏、永遠。 夏とカルピスは王道だね。 倖 燗拿20070321 |