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学校の校庭の横にある石造りの階段に腰をおろす。校庭では放課後の部活動をしている野球部やらサッカー部やら陸上部やらその他 諸々の部が汗水たらして真夏の炎天下の中頑張っていた。色々思いつめてた私は溜息をついて風に煽られてめくれたスカートを直す。 眩しい笑顔のあの人は太陽みたい。真剣なまなざしは雷のよう。そんな私は惨めでべそかき。ちっとも強くないのに強がり。だめね。好きなのに。


炎天下のなかでの部活は流石に堪える。次は夏の大会だけどもう余裕はいってられねぇからがんばるしかねぇんだけどな。汗が滝みたいに 溢れてくるもんだから邪魔くさい。帽子をはずしてユニフォームのそでで汗を拭う。その隙に上を見上げてみれば太陽が憎らしいぐらいに眩しい。 倒れそうだなー・・・。色々もやもや考えてると部活に身がはいらねぇな。眩しい目をしたあの子は太陽みたいだ。はにかむ笑顔は咲いたばかりの 花のよう。こんなオレはいつも笑ってるだけ、へらへら。結構いろんな事を流しちまうことがある。情けね。こんなんじゃだめだよな。好きなのにな。



すきなのに。



いま、思いが伝わるなら今すぐに空が漆黒の闇に包まれて星屑がちってこの地上にふりそそげばいい。そして、星屑に当たった道端の花が赤い 大輪の花をさかせればいいのに。今此処で大声で叫べたらいいのに。大空にうちあげられて咲いたばかりの花火はきらきらしてて綺麗。私も あんなふうにきらきら輝けたらいいのに。水が肌に触れたら日に焼けて、痛い。くよくよしてる自分がうらめしいよ。笑いたいな。泣きそうな笑顔だけ。 風がやさしいよ。


すぐに、気持ちって伝わるもんじゃないけど伝わるんだったら伝わって欲しいよな。もし、すぐに伝わってくれんだったら真上にある太陽が地上に くっつくぐらい沈んで空を真っ赤に染めた夕焼けにしてその赤でオレとあの子の繋がりを真っ赤に染めて欲しい。それで、その赤く染まった繋がりが 水に染みて苺のかき氷になればいい。シロップが沢山かかってて味が濃すぎるくらいのかき氷になればいい。流れ出た汗が地面に落ちて消えてしまう。 非力。笑顔を投げかけるだけで、なにもできない自分が非力だよな。笑いてぇな。困った笑顔だけ。風が生ぬるい。



非力で恨めしい



重い腰を上げて校庭を見つめるのをやめる。帰らなくちゃ。バッグをもって歩き出す。なんだか悔しいから早足で歩いて学校を出た。帰りには本屋 さんに行ってお母さんに頼まれたものをかって行かなくちゃ。それからちょっと、公園に行こう。すこし、落ち着かなくちゃ。自分をみなおさなくちゃ。


長かった部活は終わった。ほんと、今日はもやもやして駄目だった。監督にも調子悪いのか?とかいわれちまったし。とりあえず、いつも通りとは いかないけど校庭の整備をして自主練を少ししてから重いバッグをもって帰る事にした。なんかスッキリしないから走って学校をでた。空は赤い。



もやもやして悔しい



学校を出た時よりも少し重くなったバッグをもって公園のブランコに座る。ギィと古びた金属の音がした。少し足でブランコを漕いでゆらゆらする。 空はすっかり真っ赤で夕焼けがすごかった。明日も晴天だね。ずっとあの人の部活姿を見てた私は何なんだろう。言いたいなら言えばいいし、 そんな急にじゃなくてもう少し話せばいいのに。話したいことなんて山ほどあるのだから。溜息が出る。


さっきとなんら変わりない重たいバッグをもって公園に入る。ぼーっとして回りが見えない気がする。とりあえずブランコに腰を下ろす。キィーと間延びした 金属音が鳴った。隣に人が座ってるけど気にせずに足でブランコを少し揺らす。さっき部活中に思ってた夕焼けの真っ赤なそらが目の前に真上 に広がっている。赤すぎてすごい。明日も絶対晴れる。声掛けたいならかけらばいいのにな。笑顔しか返せない。溜息ばっかだ。



溜息がかさなった



あれ、隣の人も溜息。悩んでるのかな?私と一緒かなぁ。ちょーっと顔を・・・・。

ん?隣の人も今溜息ついた、よな。やっぱ人間悩むことばっかだよな。どんなひと・・・か。


「「あ」」


倖?」
「や、山本く?!」
「こんなとこで溜息なんてついてどうしたんだ?」
「え、いや、山本君こそどうしたの?」


互いに質問してるや。笑っちゃうよ。
なんだこれ、笑っちゃうよな。


「なんだかなー、悩み事ってなかなか解決しねぇもんだなーってな。」
「そっかーまぁ、私も同じような感じかもしれないなー。」
「・・・最近暑いな。」
「ねー。なんだか倒れちゃいそうだよ・・・。」
「っはは!確かになー、こう暑いとかき氷とか食いたくなってくるよな!」
「やだー!山本君何味が好きなの?」
「あーオレはブルーハワイとかすきだなー。倖は?」
「私・・・いろいろ好きだけどいちごが好きだな!一番!」


倖、いちご味好きなのか・・・。
山本君ブルーハワイ・・・。


「うし!じゃあ食いに行こうぜ!おごってやるよ!」
「え、そんな!いいよう!お金もってるし・・・!」
「まぁまぁ気にすんなって!な?」
「う、いいの?」
「おう!」
「あ、ありがとう。」
「どういたしまして!」



やべーな・・・ちょっと薄暗くてよかった。つか、本当に倖いちご味とか・・・。オレが考えてたことみたいだな。そう、ならねぇかな・・・。 なんか隣に座ってたことも分からなかったのになんだろうな、この話の進み具合って。逆にうまくいきすぎてて怖いくらいだ。


や、やば!隣に座ってたのが山本君だったなんて・・・。きがつかなかったー・・・。と、いうかかき氷おごってくれるなんてそんな・・・。もう やばい・・・。それより、どうして今日こんなに話せてるんだろうか。なんかバチが当たりそうだよ。ほんとにほんとに空が暗くってよかった。



夕闇に染まる空へ



えーっとこの辺のかき氷屋は・・・諏訪屋ぐらいかな。ちょっとかかるけどいいよな。あーなんかオレ本当に倖の事すきなのかな。好きは好き なんだけどこうゆう場面になるとちょっと自分を疑っちゃうんだよな。もし付き合ってたらこうゆうのって制服デートみたいな感じなんだな。


ううーん。緊張というかどきどきしすぎて何も喋れないよう・・・。ちょ、これじゃ不自然だよね。でも山本君ちょっと難しい顔してるよ! うあああ!これでちょっとなにか話せたりとかちょーっと笑えたり出来ればいいのになぁ!私しっかりしてー!!



倖?大丈夫か?」
「え?なんで?」
「いや、ずっと黙り込んでるからよ。」
「ううん!大丈夫だよ!」
「おう、それならいいんだけどな。」
「ありがとう。」



うわ!倖の笑った顔・・・。
山本君やさしいなぁ・・・。



「ついたついた。此処で食うぞー。」
「う、うん!」
「味は?いちごでいいか?」
「うーん。今日はブルーハワイがいいかな!」
「え、いちごじゃなくていいのか?」
「うん、山本君が好きって言ってたから食べてみようかなーって。」
「お、じゃあオレはいちごにすっかな。」
「あはは、今日は味チェンジの日みたいだね。」
「確かにな。おじさーん、いちごとブルーハワイいっこづつなー!」


○●○●○●○


「ほい、倖の分な。」
「あ、ありがとう。本当にありがとう。」
「いやいや、かき氷一個でそんなお礼なんかしなくていいのによ!」
「そんな!ありがとうだよ!」
「あっはは!味はどうだ?」
「うん、おいしいよ!いちごは?」
「美味いけど甘いなー!」
「ブルーハワイも結構甘いけどね!」
「そうか?あーもう真っ暗だな。」
「そだねーってか今日星がいっぱい!」
「流れ星でもありそうだな!」
「ねーそしたら願い事どうしようかなー。」
「オレは野球で優勝だな!」
「山本君らしいね!私は・・・美術展金賞かなぁ?」
倖は上手いもんなー。オレ結構倖の絵見たことあるんだぜ。」
「本当に!?うわーまだまだへたくそだから恥ずかしいなー!あ、でも私も野球部の試合見に行った事あるんだよ。」
「うわー!オレミスとかしてなかった?」
「いやいや、山本君さすがってほど上手かったよ!パーフェクト!」
「っはは!ありがとな。野球はオレにとっては大事なもんだからなぁ。」
「でも何かに一生懸命打ち込んで頑張る人ってステキだと思う!」
「それはオレも思うけどそれは倖にも言えることだと思うぜ。」
「そうかな?でもそう言ってもらえると嬉しい!」


「あ!流れ星!」
「お!まじか!」


(本音は倖と付き合いたいだけど・・・。)
(本当は山本君と付き合えたらいいな・・・なんて。)


「願い事した?」
「あぁ、なんとか!」
「きっとこの空中の星が流れたら綺麗なんだろうねー。」
「だな、でもそんなことあったらすげぇよな。」
「・・・・・。」
「・・・・・。」


空からもし星が降ってきたら


「本当はさ願い事違うんだ。」
「え?」
「さっき言ってたやつじゃなくて違うことをお願いしたんだよ。」
「・・・どんなお願い事?」
「それは、なかなかいえねぇな!」
「なんだよー!でも、実際私もちがったりするんだなー!」
「だったら倖はなんて言ったんだよ?」
「そりゃ、私もいえませんな!」
倖も言えねぇのかよ!」
「あはは!」


星がちって星屑が降ってきましたよ。
空が夕焼けに染まってかき氷のいちご味が一面に広がった。


((本当はいつかちゃんと言えたらいいんだけどな。))








星屑サンセット










YUKI大好きです。8/8待ち遠しい。
倖 燗拿20070802